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陳内建司 代表取締役 共和建設株式会社

共和建設は「家族の笑顔のたえない家づくり」を目指し、オリジナルで開発した「なごみの家」と、カナダ輸入住宅のセルコホーム「ザ・ホーム」の2つのブランドを展開しています。とくに、カナダ輸入住宅に近い断熱性能をリーズナブルに実現した「なごみの家」では、断熱材の代わりに遮熱材を使うという斬新なアイデアを採用。これにより冬は蓄熱暖房機1台、夏はエアコン1台で快適に暮らせるというから驚きです。「完成まであと少し」という、その開発にかける想いを社長の陳内健司さんが話してくれました。

カナダの輸入住宅の高気密・高断熱との出逢い

当初はエコというわけではなかったんです。2000年からカナダ輸入住宅の「ザ・ホーム」を手がけていまして、それを導入したときにびっくりしたのが、なんでこんなに温かいのかということ。高気密・高断熱がその理由なんですが、本当に驚きましたね。
その高気密・高断熱を従来住宅で実現できないかと思い、樹脂サッシを使うことを検討してみたのですが、在来住宅に使うと費用的にとんでもなく高額になる。日本メーカーが出していない…というか見つけられなかったんですね。それで銀色アルミの反射材をアメリカから輸入して使ったりしたんですが、何かいいものはないかなぁとずっと探していました。

遮熱シートで高気密・高断熱を実現する取り組み

それが6年くらい前、高気密・高断熱の遮熱シートを見つけたことがきっかけで、少しずつ理想に近づいてきました。断熱材のグラスウールだけだと、夏は暑いんですよね。断熱材そのものが熱をもってしまうから空気が温まってしまう。しかし遮熱シートを使うと屋根裏も暑くならず、真夏で3233度に上がるかどうかだったんです。ですから「あぁ、これはいいな」と思いました。

通常は屋根面に貼る遮熱シートですが、天井面に貼って、その下に通気層の空間をつくります。そして遮熱材だけで、断熱材を使わないことにしました。それで蓄熱暖房機を入れると、冬は20度くらいになるんです。夏もエアコン1台で30度まで上がったことがないんですよ。天井は4m50cmくらいあって広いんですけどね。開口部は北側につけて、西側はシャットアウトします。エアコンメーカーの人が来るとびっくりしますね。なぜエアコン1台で済むの?って(笑)。実際、住んでいる人は暑くない、寒くないとおっしゃいます。

この考え方は、山口の工務店さんで、以前「おおやぶソーラー」にいた方が行った断熱材なしで遮熱材だけにして基礎断熱をしたという方法が元です。壁の中をスカスカにして、自然に空気を交流させるといいという考え方なんです。さらに昨年くらいに岩手で遮熱材を販売する方が「屋根に熱を貯めておいて、冬はその空気を下に送ったらいいんじゃないのか」というアドバイスをしてくれたんです。遮熱シートは反射材なので、上に熱が溜まるんです。そういうシステムがうまくできないかなと思っているときに「エコハウスマイスター養成講座」の話があり、受講しました。養成講座の6回は興味のある内容でしたから良かったです。久しぶりに建築の勉強に触れたという感じがして新鮮でした。次女が静岡の建築会社で働いているんですが、ぜひ行かせたいなと思っています。

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オリジナル「なごみの家」をエコハウスとして

今後は、エコハウスとしてのメソッドをまとめていくのがテーマです。オリジナルで「なごみの家」というブランドを作っていますが、まだちょっと足りないところがあります。もともと遮熱材だけで高気密・高断熱の実現を目指した家でしたが、遮熱材だけでは「長期優良住宅」の認定を取得できませんので、部分的に断熱材と組み合わせて建てています。この1年で56棟を建てています。本当は断熱材をプラスしたくないんですけど、長期優良住宅の制度的には入れないといけないので仕方なく…(笑)。

外壁材を貼って、骨組みがあって、その間に遮熱シートと通気層があるわけですが、骨組みだけのところには断熱材のグラスウールを入れずにクラスターボードの12mmで仕上げて、クロスを貼ります。あ、断熱材は長期優良的に必要なところには入れていますよ(笑)。でも、それでとても温かいのです。建物の温冷は、断熱性ではなくて気密性にあるのかもしれません。ちなみに、サッシは全部樹脂サッシを使っています。

断熱材と遮熱材の良好な関係で、より快適に

断熱材は冬暖かく、遮熱材は夏涼しく過ごすのに有効なので、2つをうまく組み合わせると本当にいい関係ができるかなと思っています。現状、天井裏の遮熱材の上にあったかい空気が溜まるので、それを下に回す工夫を加えればいいわけですので、ダクトを取り付けないで自然に空気を対流させたいなと考えています。しかし、それには「機械で回す方がいいのかな」「直付けのファンを回せばいいのかな」、または「床下から温かい空気が吹き出るので、床下にダクトをもっていった方がいいかな」など、最低な工法を思案中で、完成まであと少しかかりそうです。

実は、九州は断熱材の施工が不慣れなんです。昔は50mmしかなかったから、隙間があろうがあまり気にしていなかったんです。輸入住宅を始めて、ここまでしないといけないんだって驚きました。九州は夏が暑いから、とにかく風が通るように、日が当たらないようにつくっているんですね。ですから、東北の方が九州に来ると寒いと感じるようです。とくに夜は…。彼らは寒いところに住んでいますから、温かく過ごせる工夫をしていますからね。しかし、九州の夏の暑さは半端じゃない。35度まで上昇し、昨年は、37〜38度にもなりました。断熱材を使った家は、夜エアコンを消すとじわーっと暑さが襲ってきます。なぜなら、断熱材があったまってしまっているから。50mmじゃなくて100mmなど厚くするほど暑くなるんです。蓄熱の弱い断熱材のウッドファイバーwp使用すれば良いかもしれませんが、もう少し安価にならないと現実的には厳しいですね。

 

 

 

 

 

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大工さんを育てて、次世代へ繋げたい

もうひとつの私の夢は、大工さんを育てること。

私の祖父も父も大工だったんですが、私は大工仕事をまったくできません。
今となっては、大工ができるように修業しておいたらよかったなと思いますが、若い頃は何も考えていませんでしたからね…。

今、うちの社員は大工が1人、現場監督が2人いますが、これからは20代〜30代の人たちをちゃんと大工に育てたいなと思っています。今は職人さんに厳しい時代と言われていますが、物を作る人がいなくなると寂しいですよ。次が続かないですからね。