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平松明展 代表取締役 平松建築株式会社

創業して6年。20代は大工として数々の家に関わり、家づくりにもっとも大切なものが何かに気付く。現在は長期的視野を持った家づくりにこだわり、ライフプランに基づいて、生涯住居コストを削減した家を提案。環境負荷が少なく長持ちする家づくりは、エコハウスという概念はもとより、住む人が思い通りの人生を歩むために重要なポイントが押さえられており、代表の平松明展さんはこれからのスタンダードになることを強く望んでいます。

ライフプランをつくり、そこから家づくりの正解を導く

私には、家づくりの正しい方向について「これが正解だ」というやり方が自分なりにあるんです。それは家のつくり方とはまた別の部分で、うちでは、家づくりを考える際に、必ずライフプランと呼ぶ人生設計を最初に作るようにしています。

団塊世代のお父さんたちは、私たち子どものために教育費などをしっかりかけて大学に進学させたりしてくれました。それを当たり前にやってくれましたが、今の私たち世代が自分の子どものために同じことやってあげようって思っても、大抵はできないんですよ。そのくらい厳しい時代なんです。そうした現状をまず認識してもらった上で、ただ単純に格好いい家をつくりたいということだけじゃなく、長期的な住居コストをいかに圧縮し、自分たちが思い描くような家で、思った通りの人生を暮らせるかということを考えた家づくりをしています。まずはライフプラン作って、いい人生を送るにはどういうことをすればいいかを落とし込んでから、家づくりの正解を導きだすというか…。逆にライフプランがないとお客さまが望む未来が見えないので、そこはしっかりお伝えしています。家を建てるってことは、冗談抜きでお客さまの一生を背負う覚悟を持っているんです。

生涯住宅コストを考えた家づくりを目指す

そんな長期的な住宅コストを、私たちは「生涯住宅コスト」と呼んでいますが、私がライフプランと結びつけて考えるようになったのは最近です。環境負荷軽減を考えた家なら必然的に光熱費は下がりますし、長持ちするので建て替えコストやメンテナンス費用も下がります。購入時にお値打ちな家だったとしても、10年毎に塗装費用が100万円かかるとしたら、結局安い家ではなくなり、ライフプランが大きく崩れてしまうことだってあるんです。
ですから、うちでは金融資産残高と照らし合わせて、生涯住居コスト削減金額をシミュレーションし、お客さまにご提案しています。例えば、90歳の時の金融資産がどのくらいあるかと試算すると、生涯住居コスト削減した家とそうでない家では約2000万以上もの差が出てくることがあります。その差は光熱費や売電収入、建て替えサイクルの延長による再建築費用の削減などです。

こうしてシミュレーションしてみると、家って、見た目の良さだけじゃなくて、柱をどう使っているか、通気がちゃんとできているか、メンテナンス費用を低減するためにどんな工夫がされているか…など、見えないところにこそ工夫をしなければならないと思いますよね。僕らはプロとして、10年、20年、30年、40年、50年とずっと先のことを見据えたときにどういった問題が起こるかと考えた上で、すべてのメリットとデメリットを伝えるが本当の仕事ではないかなと思います。

その中で「ソラドマの家」などは、環境負荷などにかなり配慮していて、とても勉強になりました。

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大工時代に経験と知識が、今に役立っている

私は開業して6年になりますが、20代は大工でした。大工として10年間、あらゆる住宅に関わり、実際に築3040年の家をめくったり、つぶしたりすることも多くありました。そこで気付いたのは、家のつくり方によって傷みの度合いがまったく違うことです。中には、何も痛んでいない家もあったほどです。その違いは「通気」でした。私はエアサイクルという通気システムを導入した家をつくり、15年後のリフォームを機に家をめくってみたんです。すると、建築した当初と何も変わっていない状態の内部構造が見えて…。あぁ、これはこの先30年経ってもきっと何も変わらないんだろうなと思いました。それを見て、やはり通気は間違いなく、環境にも良くて、居住性も良くて、長持ちするんだと実感して、ここは絶対に外してはいけない!と確信しました。
なので、うちでは透湿性度の高い素材を追求したり、壁や床下がきちんと通気できる建て方にこだわり、空気がよどむところが一切ないように心掛けています。
さらに、ビニールクロスを貼った場合と、透湿クロスを貼った場合ではどのくらい臭いが違うかなど、お客さまにも実際に体感してもらい、通気の大切さを伝えています。

マイスター養成講座は「答え合わせ」だった

このような家づくりへのこだわりがあるので、常々、透湿性や環境負荷についてもっと突き詰めていきたいなという思いがありました。そこでエコハウスマイスター養成講座を受講したのですが、半分「答え合わせ」のような感じでした。自分が考えていることと共通する部分があれば、「やはり正解だったな」と自信を得ることができて良かったです。残り半分は、まだまだ全然足りないなと思うくらいレベルが高かったですね。素材ひとつをとっても、長期的に長持ちするためにそもそも生産するまでの過程にも技術や知識が及んでいる。昔ながらの家づくりの良さと、今の技術がちょうといいところに落ち着けるとこういう家になるのかなと思いましたね。

難しいなと感じたのは、技術的なこともそうですが、コスト面ですね。我々もビジネスマンなので、きちんと売れるラインでそれらを揃えないと「できた」とは言えません。長期的なコスト削減するいい家をつくりましょうと言うと、やはり最初にある程度の支出をしないといけない。お客さまの借入額の限度と照らし合わせてギリギリのラインで一番いい家づくりをしようとしても、大多数の家族には手の届かない家になってしまっては、私たちの一番の目的が果たせないんじゃないかなと。実際にうちでも普通の建材を入れたファミリーラインを導入して価格調整していますが、今後も誰にでも手の届くいい家づくりを目指して、もっといい方法を探していきたいと思っています。

次の世代が笑顔になれる家づくりを目指して

開業した当時、私は静岡ナンバー1になろうと思っていました。ところが今は少し考え方が変わり、たった1棟でも、その1棟が世に出ることで私たちの子どもたち世代がいつまでも笑顔になれる家かどうかってことにこだわっていきたいと思っています。しかし、それがいくら良い家でも、たった1棟では世の中は変わらないので、そういう先のことを考えた子どもたちに優しい家をたくさんつくっていく使命がある。近年では、ローコスト住宅がたくさんありますが、実際には本当に安くていい家は存在しないと思います。それを地場の工務店をはじめとするさまざまな人に気付いてもらい、長い目で見て本当にいい家をつくり続けていきたいと思います。そしてお客さまにも「これが絶対に正解ですよ」と自信を持った提案をして、ちゃんとした結果が出せれば、多くの人に注目され、それがスタンダードになっていくと思うんですよ。

環境負荷低減する本物の家を、お客さまがもっとも喜ぶカタチで売る。それが地域経済の自立循環にも繋がるといいですね。そのためにはうちでの家づくりのメリット・デメリットをわかりやすく発信することが課題です。自分がやっていることとお客さまに提供しているものにズレがないように発信して、同じ思いを持っている人をこれからも大切にしていきたいです。

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